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    「連れっ子をして行ったです。その子供がまたチブスになって、……」

    今日幾人かと会つて口を利いただけで、彼は自分が今はじめて河原町での医師になつているのを感じた。それはまだ形ができてはいなかつた。だが、彼の足は今河原町の土を踏み、彼等が房一を認めると否とにかゝはらず、否応なくその相手になつていなければならなかつた。この短時間のうちに得た小さな発見は、何故か房一の胸に或る落着きを与へた。

    「いや、鳴つた。出張所の鐘がたしかに鳴つていた」

    やつと、徳次は感心した。青島陥落はついこなひだのことで、その時は徳次も提灯ちやうちん行列に出たのである。

    二人は岸に着いた。

    「それあ、いかん。こんなに多くはいらんよ」

    「御焼香を。――どうぞ、お近いところから御順に」

    一人だと何んて少ししか喰べないもんだらう、まるで小鳥の餌ほどだつたわ、と可笑をかしがりながら。――それに、後片づけだつてざぶざぶつと一二回やれば済んでしまふわ、と横目で膳の上を眺めながら。

    「あの人はつまりこんな風な人なんだわ。こんな風に――」

    房一の態度が穏かだつたので、相手はいくらか落ちついた。

    房一は目を上げて注意深く道平を見た。

    と、練吉は房一の方をふりむいた。

    徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。

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